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遠咆え

齢九十才を過ぎて・・・
心無い世間の人からあとの存命期間をと冗談に聞かれたら、
「精一杯に生きて十年位」と答をしよう。
そして 「一〇〇才、句切りがよいでしょう」をつけ加えよう。
若い時に、一〇〇才まで生きるとは、想像もできなかった年齢である。
私の母は六十四才で乳癌になり死別した。そんな母がこのごろになって愛しくてならない。
私の脳裡には、ずいぶん年を寄せた母親像しか残っていない。
現在周辺にいる六十四才の女性達は、娘をふくめて若々しく人生を潤歩している。母は髪を引きつめて束ね、顔にはクリームも塗っていなかった。特に晩年、物資の不自由な時代、子供の事のみを思って、自分は何一つ要求しなかった。
母に比べて、今の私はなんと恵まれた日々を送っていることか。
大空にむかって,
「お母さん、あなたの物をなにか買いたいよ」
「石に蒲団は着せられず」
昔の諺の言葉を叫びたい。今しみじみと心の中でかみしめている。
現在、動作も頭のひらめきも遅滞したように毎日、叱咤激励されている,
負けない大声の返事を返しているが,今のままで好いよ。元気な大声のままで終りたいのだから・・・
大正末期生れの女が今日も一〇〇才にむかって元気に遠咆えをしています。

木村喜美子